「鉄骨住宅は音が響くからうるさい」――そんな印象を持つ人は少なくありません。とくにインターネット上では、実際に暮らしている人の声や感想が断片的に飛び交い、「鉄骨はやめた方がいい」といった表現も見かけます。しかし、こうした印象は、必ずしも事実に基づいたものではないことが多くあります。音に対する感じ方は、構造そのものだけでなく、設計や内装、住まい方によっても大きく変わってくるものです。
とくに「重量鉄骨」と呼ばれる構造は、ビルやマンションにも使われるほどの強度を持ち、同じ鉄骨でも「軽量鉄骨」とは性質がまったく異なります。だからこそ、音に関する誤解も生まれやすいのです。住宅を建てようと考えるとき、遮音性や生活音への配慮は大切な判断材料のひとつ。だからこそ、うわさや思い込みではなく、正しい情報に基づいて比較・検討することが必要です。
この先では、なぜ「うるさい」と言われるのか、その理由と実態を丁寧に紐解きながら、構造ごとの違いや防音対策の考え方まで整理していきます。
重量鉄骨住宅で「うるさい」と言われる理由とは
重量鉄骨造の住宅に対して「うるさい」という声が上がるのは、構造の問題というよりも、生活音の伝わり方や室内の仕上げによる影響が大きいと考えられます。まず知っておきたいのは、重量鉄骨は非常に硬く振動が伝わりやすい素材であるという点です。たとえば、硬い床に何かを落としたときに「カーン」と音が反響するように、鉄骨は軽量かつ剛性が高いため、素材として音を反射しやすい性質があります。
ただし、これはあくまで「素の状態」の話であり、実際の住宅ではさまざまな緩衝材や仕上げ材が使われます。床の構成、壁の仕上げ、天井の裏打ちなど、設計段階での音のコントロール次第で、体感としての“うるささ”は大きく変わってきます。とくに防音性を意識した断熱材や遮音パネルの使用、二重床・浮き床といった仕組みを取り入れれば、日常生活で気になるレベルの音は十分抑えることができます。
また、「うるさい」と感じる場面には、生活スタイルの影響も無視できません。例えば、テレビや音楽の音量、足音、話し声など、家族間の距離が近いほど気になりやすくなります。これは構造に関係なく、木造や軽量鉄骨の住宅でも共通する課題です。
したがって、「重量鉄骨だからうるさい」というのは短絡的な理解であり、遮音性や音の伝わり方は設計次第で大きく改善される領域だといえます。問題の本質は「素材」ではなく、「どうつくるか」にあるのです。
木造・軽量鉄骨・重量鉄骨の遮音性の違い
住宅における「音の伝わり方」は、構造の違いによってある程度の傾向があります。木造・軽量鉄骨・重量鉄骨の3つを比較すると、それぞれに遮音性能の特徴が見えてきます。
まず木造住宅は、構造材そのものが柔らかいため、音を吸収しやすい性質を持ちます。ただしその反面、気密性が低く、外からの音や隣室の音が壁を通して伝わりやすい傾向があります。また、梁や柱が細いため、上下階間の振動音(足音や物音)が響きやすいという声もよく聞かれます。
一方、軽量鉄骨造は柱や梁が鉄でできており、剛性が高いため構造の安定性には優れていますが、その分音が構造体を伝って響く“固体伝播音”が発生しやすい傾向があります。床が薄い場合や、仕上げ材に吸音性が少ない場合は「パーン」と反響する音が目立つこともあります。
重量鉄骨造になると、構造そのものの厚みや質量が増すため、外部からの音に対する遮音性はむしろ高くなります。特に壁や床の構成がしっかりしていれば、車の走行音や隣家からの生活音などはかなり遮断される傾向にあります。ただし、前述の通り内部で発生する音(話し声や足音など)については、設計と仕上げの工夫が欠かせません。
つまり、構造体による遮音性には一長一短があり、「重量鉄骨だからうるさい」「木造だから静か」といった単純な比較では、本当の住み心地は語れません。重要なのは、構造の特性をふまえたうえで、防音のためにどんな工法や仕様を選ぶかという設計の工夫なのです。
設計・間取り・内装材で変わる防音性能
住宅の遮音性は、構造だけで決まるものではありません。設計の段階から「どこで音が発生し、どこに伝わるか」を想定し、的確に対策を講じることで、住み心地は大きく変わります。特に重量鉄骨造のように構造的な自由度が高い住宅では、防音を考慮した設計がしやすいという利点があります。
まず、音の発生源から距離を取るという基本的な考え方があります。たとえば、子ども部屋やリビングなど、音が出やすい空間は、寝室や書斎など静けさを求める空間から適度に距離をとる、もしくは水回りや収納などの“音の緩衝帯”を挟むことで、音の伝達を和らげることができます。
さらに重要なのが、内装材の選び方です。天井や壁の仕上げに吸音性のある素材を使えば、反響音を軽減できます。たとえば、石膏ボードの裏にグラスウールなどの断熱材を入れるだけでも、音の伝わり方は大きく変わります。また、床はフローリングよりもクッション性のある床材や二重床構造を採用することで、階下への足音の響きを抑えることができます。
音の侵入・漏れやすい開口部(窓やドア)にも注意が必要です。サッシを二重窓にする、防音性の高いドアを採用するといった対策も効果的です。
つまり、重量鉄骨という構造の特徴を正しく理解したうえで、設計・素材選び・間取りの工夫を重ねれば、防音性能を高めることは十分に可能です。実際、多くの集合住宅やオフィスビルで重量鉄骨が採用されているのは、その構造が防音にも適しているからなのです。
重量鉄骨ならではの防音対策と、建築現場での実証的な知見
重量鉄骨構造の魅力のひとつは、設計の自由度と構造の強さにあります。この特徴を活かすことで、防音性能も効率よく高めることができます。たとえば、ラーメン構造(柱と梁で建物を支える方式)を採用すれば、耐力壁に頼らずに間取りを柔軟に設計できるため、防音を意識した部屋配置や音の遮断帯の設計がしやすくなります。
また、施工精度が高いことも、防音性能に貢献しています。柱や梁を現場で溶接・ボルト締めする重量鉄骨造は、構造体のブレやズレが少なく、建物全体の剛性が高いため、遮音材や断熱材が設計通りに隙間なく収まりやすくなります。こうした密実な施工は、音の侵入や漏れを防ぐ上で非常に重要です。
現場での実務においても、遮音性を高める工夫は随所に見られます。たとえば、上下階の間に遮音ゴムや遮音マットを敷く、間仕切り壁に空気層を設けて音の反射を抑える、機械設備の配管には遮音シートを巻くなど、建築的な配慮が積み重ねられています。これらはすべて「鉄骨だからうるさい」と言わせないための、現場レベルでの確かな対策です。
一方で、こうした性能の引き出し方は、設計・施工会社の知識と経験に大きく左右される側面もあります。「構造が強い」だけで安心せず、どのような防音仕様を採用しているか、どんな設計思想を持っているかを事前に確認することが重要です。
重量鉄骨の自由度と強さを活かした防音性の高い家づくりを目指すなら、こちらもぜひ参考にしてみてください。
→ https://www.fehome.co.jp/heavyweightsteel
音に悩まされない暮らしは「構造+設計」でつくるもの
住宅の遮音性を語るうえで、「構造だけを見て判断する」というのはあまりにも片手落ちです。たしかに素材ごとの音の伝わり方には差がありますが、それ以上に大切なのは、設計の工夫と施工の丁寧さです。とくに重量鉄骨構造は、ラーメン構造による間取りの柔軟性や、高い施工精度を活かして、静かな住環境をつくる余地に富んでいます。
「うるさい」と感じるかどうかは、設計・素材・暮らし方の三位一体で決まります。音に配慮した家づくりは、決して特殊なことではなく、最初の計画から意識すれば十分に実現可能です。構造への誤解や不安に惑わされず、根拠ある判断で住まいを選んでほしい――それが私たちの願いです。
防音や構造について、もう少し詳しく知りたい方はこちらからどうぞ。
→ https://www.fehome.co.jp/contact