「重量鉄骨造の建物は、減価償却の期間が長いから節税に有利らしい」。事業用の建物を検討する中で、そんな話を聞いたことがあるかもしれません。確かに、木造など他の構造に比べて法定耐用年数が長いため、長期にわたって経費を計上できるのは事実です。
しかし、その言葉だけを信じて計画を進めるのは少し危険かもしれません。
「初期費用が木造より高いのに、本当に元が取れるのだろうか」「税金の計算は複雑で、もし間違えて後から追徴課税されたら…」「そもそも、減価償却という仕組み自体がよくわかっていない」といった不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
実は、減価償却のメリットを最大限に引き出すには、法定耐用年数の知識だけでは不十分です。建物の構造や設備に関する深い理解、そして将来を見据えた資金計画が欠かせません。
この記事では、単なる数字の比較だけでは見えてこない、重量鉄骨造の減価償却で失敗しないための本質的な知識を解説していきます。読み終える頃には、あなたの金銭的な不安が解消され、自信を持って資産計画を進めるための具体的な道筋が見えているはずです。
■まずは基本から|構造別に比較する法定耐用年数と減価償却の仕組み

減価償却について考える前に、まずはその基本的な仕組みと、建物の構造による違いを整理しておきましょう。
・減価償却とは?
減価償却とは、建物のような高額な資産を取得した際、その購入費用を一度に経費として計上するのではなく、国が定めた「法定耐用年数」に応じて分割して、毎年少しずつ経費にしていく会計上のルールのことです。
例えば、事業用に3,400万円の建物を建てたとします。この費用を初年度に全額経費にしてしまうと、その年だけ大きな赤字になり、翌年からは経費が全くない状態になってしまいます。これでは正確な経営状況を把握できません。そこで、建物の価値が年々減少していくという考え方に基づき、費用を分割して計上するのが減価償却です。
・建物の構造で変わる「法定耐用年数」
法定耐用年数は、資産を使用できる期間として法律で定められており、建物の構造によって異なります。事業用の主な住宅の構造と年数は以下の通りです。
木造:22年
軽量鉄骨造(骨格材の厚みが3mm超4mm以下):27年
重量鉄骨造(骨格材の厚みが4mm超):34年
重量鉄骨造は34年と最も長く設定されています。これは、毎年経費として計上できる金額が少なくなる一方、長期間にわたって安定的に経費を計上し続けられることを意味します。短期的な節税効果を求めるなら木造が有利に見えることもありますが、長期的な事業計画や資産価値を考えると、重量鉄骨造の安定感は大きなメリットになります。
ただし、注意したいのは、この法定耐用年数はあくまで税法上の計算期間であり、建物の実際の寿命とは異なるという点です。どの構造を選ぶかは、この数字の長短だけでなく、事業計画や将来の資産価値まで含めて総合的に判断する必要があります。
■節税効果を最大化する、専門家だけが知る2つの裏ワザ

法定耐用年数の違いを理解した上で、さらに一歩進んだ知識を知ることで、節税効果を大きく変えることができます。ここでは、多くの人が見落としがちな専門的な視点を2つご紹介します。
・「法定耐用年数」と「建物の寿命」は全くの別物
先ほども少し触れましたが、「法定耐用年数34年」というのは、あくまで税金の計算上の年数であり、「34年で建物が使えなくなる」という意味ではありません。
適切なメンテナンスを行えば、高品質な重量鉄骨造の建物は50年、60年と資産価値を保ち続けることが可能です。むしろ重要なのは、法定耐用年数を終えた後も、賃貸や事業用として収益を生み出せるだけの品質を維持できるかどうかです。減価償却が終わった後も収益が続く状態は、事業の安定性を大きく高めます。目先の節税額だけでなく、長期的な資産価値を維持できる構造や設計を選ぶという視点が、将来の安心に繋がります。
・「建物」と「設備」を分けて考える分離償却
これはプロの領域になりますが、非常に重要なテクニックです。建物を取得した費用は、実は「建物本体」と、キッチンや空調、給排水衛生設備といった「建物附属設備」に分けることができます。
そして、この附属設備の法定耐用年数は、建物本体(34年)よりも短い10年~15年程度に設定されています。
例えば、建物全体の取得費が5,000万円だったとしても、その内訳を「建物本体4,000万円」と「附属設備1,000万円」に分けて計上するのです。すると、設備費用の1,000万円は15年という短い期間で減価償却できるため、建築後の早い段階でより多くの金額を経費に計上でき、手元に残る現金を増やす効果が期待できます。この「分離償却」を適切に行うかどうかで、数年間の納税額が大きく変わることも少なくありません。
■建築後に後悔しないために。減価償却における3つの典型的な失敗例
重量鉄骨造の減価償却は、正しく活用すれば強力な経営ツールになりますが、知識が不足していると予期せぬ失敗を招くことがあります。ここでは、よくある3つの失敗パターンとその回避策を解説します。
・失敗例1:初期費用だけで判断し、トータルコストで大損する
木造に比べて初期費用が高くなる重量鉄骨造をためらう人は少なくありません。しかし、建物のコストは建築費だけで決まるものではありません。長期的に見れば、耐久性が高くメンテナンス費用を抑えられる重量鉄骨造の方が、結果的に総支出が少なくなるケースも多いのです。減価償却による節税効果や、将来の修繕費、資産価値の維持まで含めた「ライフサイクルコスト」で比較する視点を持たなければ、目先の安さに釣られて将来大きな負担を抱えることになります。
・失敗例2:設備の減価償却を見落とし、節税機会を逃す
先ほど解説した「建物附属設備の分離償却」を知らないまま、建物全体の費用を法定耐用年数34年で償却してしまう失敗例です。本来であれば15年で償却できたはずの設備費用まで、34年かけてゆっくり経費計上することになり、初期段階での節税効果が大きく薄れてしまいます。これは税務に関する専門知識が必要なため、施主自身が気づくのは困難です。建築会社が税務的な視点を持っているかどうかで、数百万円単位の差が生まれる可能性もあります。
・失敗例3:出口戦略を考えず、資産価値が目減りする
建物を建てる際に、将来その建物をどうするのか(売却するのか、子供に相続するのか)という「出口戦略」まで考えている人は多くありません。しかし、減価償却は建物の簿価(帳簿上の価値)を年々下げていく行為です。例えば、減価償却が進んで簿価が1,000万円になった建物を3,000万円で売却した場合、差額の2,000万円が利益とみなされ、多額の譲渡所得税がかかります。減価償却による節税メリットと、将来の売却時にかかる税金のバランスを考えずに計画を進めると、せっかくの節税分が吹き飛んでしまうリスクがあるのです。
■失敗しない建築会社選びの条件|税務知識と実績の見極め方
これまで見てきたように、減価償却を最大限に活用し、長期的な資産形成を成功させるためには、建築や設計の知識だけでは不十分です。税務的な視点を持ち、将来の収益性まで見据えた提案ができる専門家をパートナーに選ぶことが何よりも重要になります。
では、どのような基準で建築会社を選べばよいのでしょうか。確認すべきは以下の3つの条件です。
第一に、重量鉄骨造の豊富な施工実績があるかどうか。これは会社の技術力と経験値を測る最もわかりやすい指標です。例えば創業から50年以上、地域に根差して多くの建物を手掛けてきた会社であれば、その土地の特性や法規制にも精通しており、安心して任せることができます。
第二に、設計から施工、アフターフォローまで一貫して相談できる体制が整っていること。部門ごとに担当が分かれていると、細かな要望や税務的な相談がスムーズに伝わらないことがあります。一人の担当者が責任を持って最後まで伴走してくれる体制は、複雑な計画を進める上で心強い存在です.
そして第三に、自宅だけでなく、賃貸や店舗といった事業用の建物を組み合わせた提案力があるかです。例えば、1階を店舗や事務所として貸し出し、2階を自宅にする「賃貸併用住宅」のような形は、家賃収入でローン返済を賄いながら、安定した資産を築く有効な手段です。このような収益性を高めるプランを具体的に示せる会社は、あなたの事業の成功まで真剣に考えている証拠と言えるでしょう。
これからの建築会社選びでは、デザインや価格だけでなく、こうした「資産形成のパートナー」としての視点を持って比較検討することが、失敗を避けるための鍵となります。
より具体的な施工事例やプランについて知りたい方は、実績豊富な会社のウェブサイトで実際の建築例を確認してみることをお勧めします。
https://www.fehome.co.jp/construction
■まとめ:賢い資産形成の第一歩は、信頼できるパートナー探しから
重量鉄骨造の減価償却は、法定耐用年数が34年と長いという単純な話ではありません。その仕組みを正しく理解し、「建物附属設備の分離償却」や「出口戦略」といった専門的な視点を取り入れることで、初めて強力な節税ツールとなり、あなたの資産形成を加速させます。
しかし、これらの複雑な計算や将来予測を一人で行うのは現実的ではありません。むしろ最も重要なのは、あなたの不安や疑問に寄り添い、税務的な知識と豊富な経験をもって最適なプランを一緒に考えてくれる、信頼できるパートナーを見つけることです。
まずは、さまざまな会社の施工事例を眺めながら、ご自身の理想とする建物のイメージを具体的に膨らませてみてはいかがでしょうか。そして、少しでも気になる会社があれば、専門家の話を聞いてみることです。その小さな一歩が、あなたの不安を解消し、5年後、10年後の未来を大きく変えるきっかけになるはずです。
資産形成に関する悩みや、具体的な建築計画についてのご相談は、専門家がいつでもお待ちしています。
https://www.fehome.co.jp/contact